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オフィシャルインタビュー第3弾
つなこ(キャラクターデザイン原案)

――作品への参加が決まったとき、この企画について、まずどんな感想を持たれました?

つなこ 丸戸先生の恋愛系の作品って人間関係が泥沼になるイメージがあったので、今回はどのぐらいの胃薬の量が必要かわからないな……と思ったのを覚えています(笑)。

――丸戸先生の作品には参加以前から親しんでおられたんですね。

つなこ はい。といっても、『冴えない彼女の育てかた』(以下、『冴えカノ』)からなので、比較的新参者です。

――いやいや、とはいえもう10周年を迎える作品ですから。ともあれ、丸戸作品のノリはもともとご存知だったんですね。ほかにも、企画の概要からお感じになったことはありましたか?

つなこ ファンタジー要素のあるバトルが恋愛の要素とぶつかったとき、どんな感じになるのかがすごく楽しみでしたね。お声掛けいただいた段階では、全体プロットを資料としていただいたんですけど、いただいた瞬間にあっという間に読んでしまって、「これは絶対面白いものになるな!」と思った記憶もあります。あと、その時点でアヤノさんのポジションは結構明確になっていたんですけど、私は多分、アヤノさんの味方をしてしまうだろうな……と。

――丸戸作品らしい、ちょっと不憫なところのあるヒロインですよね。

つなこ でも、最初のうちはずっとそう言ってたんですけど、蓋を開けたらキサラがかわいくて。今はキサラとアヤノがセットで好きですね。いがみあいつつ、お互いのことを実はちょっと好き、お互いに何かちょっと気にかけているところが、『冴えカノ』の詩羽先輩と英梨々に通じるところがあるというか。お互いに何か謎の信頼感があるんですよね。「あいつはこのぐらいじゃ死なない」みたいな感じで戦場に立っている。シナリオでもそうでしたけど、実際に完成したアニメは、その雰囲気がより強く伝わってくるものになっていました。

――お声掛けがあった直後から、すぐホン読み(脚本会議)に参加された形ですか?

つなこ そうですね。原作のないオリジナルのストーリーなので、キャラをデザインするときに、その設定に決まるまでの経緯が見えた方がいいだろうということで誘っていただいたんですけど、まさかほぼ毎回出ることになるとは自分でも思わなかったです(笑)。

――それは何か理由が?

つなこ イラストレーターがホン読みに出ることは、最近の作品だとなくはないんですけど、その場合は自分もシナリオに参加していることが多いんです。だから単純に、そうではない作品のホン読みに出られるのは貴重な機会だと思ったからですね。

――つなこ先生の目から見て、今作のホン読みの印象はいかがでした?

つなこ 丸戸さんと柏田さんはホントに仲が良いんだなあ……って毎回思ってました(笑)。

――このオフィシャルインタビュー企画の第2回でおふたりに対談していただいたんですが、たしかに仲の良さが伝わってきました。

つなこ あと、思い出深いのが、「キサラ」という名前は私がアイデアを出して、それが採用されたんです。キサラという言葉は、スペイン語で「ほしい」とか「望む」みたいな意味があって、これはヤンデレだ! と思って提案したら採用いただいて。あまりできない経験で、すごくうれしかったです。

――オリジナル作品ならではのことですね。デザインの作業には、参加してどのくらい経ってから取り掛かられたんですか?

つなこ みなさんがストーリーを固める作業と並行して、キャラクターをデザインしていく感じになっていました。たとえば「悪魔は角が生えている、では、人間に擬態しているときはどうやって隠しているのか?」という話題がストーリーを考える話し合いの中で出てくると、そこから「角や翼は身にまとっているものに擬態している」というアイデアが出て、それがデザインに反映されてキサラのリボンの設定が生まれる、みたいな感じです。あのリボンは角が擬態しているもので、だからキサラがどんな格好をしていても、あのリボンは必ずついているんです。ちなみに翼は普段、キサラの下着になっているという設定もありました。

――デザインの大枠のコンセプトの指示はあったんですか?

つなこ 特になかったと思います。いつもの画風ありきで呼ばれてるのかなと思っていたので、あんまりひねったものは出さないようにしようと思っていました。ラーメン屋として呼ばれたのでラーメンを作る、でも、なるべく美味しいラーメンを出そう……みたいに。あ、ただ、細かい衣装指定があったキャラクターはいました。

――誰ですか?

つなこ アヤノさんです。ロングヘアーでスーツ、黒スト(黒ストッキング)が確定でした。丸戸さんの作品に絶対ひとりはいるタイプですね(笑)。あとはシュウのコートもかな。かっこよく見えすぎないようにというオーダーがあって、ボサボサの髪&古着っぽいコートという要素をご提案いただきました。中の服も初期ラフでは襟付きのシャツでしたが、もっとカジュアルな方が……ということでロンTになったり。 あとは、キサラの通う学校の制服に、「ミッション系の雰囲気」というイメージ指定がありました。もともとミッション系の学校に通っている初期設定があって、最終的にはなくなったんですけど、デザインには残っているんです。そうしたイメージ指定もあって、制服は現実感を出すよりは、「こういうの美少女ゲームで見たことある!」というものを目指しました。袖が幅広くなっているところはミッション系の制服……シスター服っぽさもある部分ですけど、スカートが白いとか、ブレザーの裾にとんがりがあるとか、そのあたりは全部美少女ゲームらしさを意識しているところですね。

――肩もそうですよね。

つなこ ああ、そうです。肩の膨らんでいる感じ、あれがもう、古き良き美少女ゲームの制服要素ですよね。キサラはひとりだけ現実感がない髪色なところも美少女ゲームっぽさを意識しています。

――キサラが現実離れした雰囲気を出しているのに対して、アヤノは地に足のついた雰囲気に?

つなこ そうですね。ただ、衣装は最初はもうちょっと落ち着いた色だったんですけど、キサラとバランスを取るために結構明るめになりました。原案の時点で暗い服・明るい服の2パターンのアイデアを出したら、明るい服が選ばれていたんですけど、そこからさらにアニメの色彩設計で、もうちょっと明るくしていただいた感じです。

――シャロンはどうですか?

つなこ シャロンは実は、キャラクター設定に紆余曲折があったんです。この作品はホン読みが一度最後まで進んだあと、2周目があったんです。

――丸戸先生と柏田さんの対談でもその話題が出ました。

つなこ その2周目でシャロンは年齢が変わって、物語の中での立ち位置も変わって、性格も180度変わったんです。最初はもうちょっと弱そうなキャラでした(笑)。ドジっ子で、表情も「はわわ〜」って感じで。それが今のちょっとクールでかっこいい感じになったんです。ただ、基本的な造形は変わってなくて、一回フィックスしたデザインを、やさぐれた大人の姿にした感じです。戦い方も変わらないので、大きくいじらなくてよかったんですよね。戦うときに映えるように、脚が見えるようにスリットを入れて、ボタンを外すとさらに広がる形状になっています。

――現状で公式サイトに載っているキャラは、男性キャラも含めて全部つなこ先生が原案を?

つなこ そうですね。ただ、これまで関わってきた作品で、お兄さん・おじさんみたいなキャラをあまり描いてこなくて、あんまり参考にできるような資料も手元になかったんです。だからマイルズとかはそんなに細かい図面を私の方では起こしていないので、最終的なデザインを起こす上では、アニメのスタッフのみなさんにかなりご苦労をかけたと思います。

――男性キャラはつなこ先生としては新境地で。

つなこ そうですね。あ、ただ、サブキャラはアニメのスタッフさんと半々ぐらいで分担しています。

――デザインが最初に上がったのはどのキャラだったんですか?

つなこ 宅配業者のふたりです。最初にいただいたプロットの時点で、「宅配業者」がキャラクター一覧に既にいて、すごく異彩を放っていて妙に気になってしまったんです。だからプロットを読んだ直後にすぐにラフを描いて送ってしまったんですよね(笑)。同じ設定から男女一案ずつ出したら、両方使っていただけてうれしかったです。

――意外でした。最初に上げたのはてっきりメインキャラの誰かかと。

つなこ おもしろい設定のキャラクターなんですよね。シュウが通販で購入しているのは悪魔退治用の武器なので、宅配業者たちも普通の人ではないんですよ。現場に直接やって来るし。街中にもいるので、一般向けの宅配も行っていると思うんですけど……。ホントにどういう業者なのか謎に包まれているので、仕事がないときはどうしているのかとか、気になります。実は私以外にも、スタッフの中に思い入れのある人が多いそうで、スピンオフがあったら見てみたいですよね。

――たしかに。手応えがあったデザインは?

つなこ キサラの悪魔状態です。パッと見て、他のキャラからちょっと浮いた感じになったのが、わかりやすくてよかったなって思います。個人的に描きやすい服になったのも、よかったです(笑)。実はキサラはキャラクターとして持っている要素はシンプルなんですけど、片方しか角と羽がない設定のおかげで、シンプルな中でも特徴を出しやすかったんです。キャラクターをデザインするときって、非対称だったり、足りないものがある方が目立つパターンが結構あると思っているんです。キサラはそのパターンが結構大きく当てはまっているかなと思います。

――おもしろいです。ちょっと引き算したようなポイントを作ると、そこがデザインのフックになるということですね。デザインが大変だったキャラは誰でしょう?

つなこ メインキャラの中ではシュウですかね。あとのキャラは思いのほかスッと進んで、逆に不安になるくらいでした。(純真な瞳をこちらに向けながら)あの、私、本当に「クズ」の気持ちがわからなくて……。

――は、はい。

つなこ そんな私なので、シュウみたいな、あまりデフォルメされていない、ちょっとリアリティがある「クズ」のことは、ぼんやりとしかわからなかったんです。いやあ、丸戸さんは「モデルがいる」って言ってましたけど、本当にあんな人がいるわけないですよ!(純真な瞳で)

――は、はい……。

つなこ 企画初期は今より少しクズ感が強かったんですが、それをうまく拾えなくって、「キレイなシュウ」みたいなのを描いてしまったんです。ストーリーを見るにヒモキャラなので、明らかにやさぐれているデザインでもないと思いましたし。結構そこでバランスをとるのが難しかったです。あ、その過程で、「目がもうちょっと死んでるような感じ」っていう指定を受けたのはおもしろかったですね(笑)。でも最終的には、シナリオ上のクズ度がマイルド(当社比)になりましたし、声の印象もあってアニメのシュウは結構明るい子になったと思います。

――では最後に、第04話以降のみどころをお願いします。

つなこ 徐々に登場人物たちの過去や、それぞれのバックグラウンドが明らかになっていくところに注目してほしいです。それに伴って現在進行形でも同時にいろいろな事態が起こるんですけど、それによってキャラクター同士の関係がちょっと変化したりもします。インタビューの始めの方でも少し話してしまいましたが、個人的にはキサラとアヤノの、それぞれ相手にちょっと申し訳ないと思ってるところが、だんだんとやりとりの中に覗き始めるところがかなり好きなんですよね。これまでのところでも、「謝らなくちゃいけないの、かな……?」ってセリフとか、すごく好きでした。ぜひ、そこに注目して見ていただきたいです。

――つまり、アヤノとキサラに注目と……。

つなこ あっ、シュウも注目ですよ! 全然悪い人じゃないんですよ、普段は優しいところもありますし……。って、なんか本編で見たことあるカバーの仕方ですね、これ(笑)。でも彼も今後の話数で、どんどん見えてくる事情がありますから。そうやって普通じゃない状況に置かれたキャラクターたちの人間模様が、先の話数に進むほどにもつれていく様子を、温かく見守ってほしいですね。